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『龍の紋章』夢枕獏著 感想

キマイラシリーズの外伝的作品です。

陰陽師』と並ぶ、夢枕獏のライフワークといっていい『幻獣少年キマイラ』は著者がなくなって死んでしまう前にきちんと完結するのかが非常に不安な作品なので、正直なところをいえば外伝的な作品を出すよりは本編をしっかりと進めていただきたいと思う部分が大です。

とはいえ、作品としては一つの格闘小説としてきちんと面白かったので、満足ではあります。氏があとがきで書いておられるように、日本で一番格闘シーンを書いてきた作家さんだけに、臨場感、迫力、ともに堪能いたしました。

 

ざっくりと内容を紹介すると、一人のいじめられっ子が、地上最強を目指す流浪の老人に弟子入りし、強くなっていく話です。こう書くと身も蓋もありませんが、そういうシンプルなお話です。出てくる人間が暴力や人殺し全く厭いませんし、地上最強の基準が敵が何人いようが武器を持っていようがいまいがその全員を叩きのめすことを基準においていますので、まぁ半端ないです。

普通の世の中にいれば、簡単に格闘技の世界チャンピオンになれるレベルの人間たちが、本当の意味でのルールなしのバトルで最強を目指すというそういうお話です。

人間がどこまで強くなれるのか。

倫理も何もかも捨てて、一個の生き物として何処まで強くなれるのか、そのために全てを犠牲にできるのか、そういうお話です。

同氏の『餓狼伝』ファンであればそのテイストは伝わるかと思います。

 

勿論、こちらはキマイラシリーズの外伝ですかや、シリーズタイトルでもあり本編で出てくる「キマイラ」という、そうした人間の技を軽々と無効化するような存在が出てくることもきちんと踏まえて作品は描かれています。