『ワールドトリガー17』感想 葦原大介先生無理はなさらずに

ワールドトリガーの最新刊が本日発売された。
しかし、普段と違って喜びは半ばしかない。というのも、この本を手に今手にとっている人はほぼみなさんご存知のように著者の葦原大介先生が、持病の悪化にともないここ数週間休載、本誌の編集部コメントを読む限りでは復帰の目処が立たないからだ。

 

このワールドトリガーという漫画は、連載開始時期から強くプッシュしてきた。
ある時は、他の多くの少年漫画にはないしっかりとした裏設定のあるSF漫画として、そしてジャンプ連載漫画としてはある意味アンチテーゼ的な主人公を配した設定の特異な漫画として、なにより純粋に面白い漫画として、ことあるごとにプッシュしてきた。

なので、ここにきての連載休止、しかも作者の葦原先生の病いが長期の休載もやむなしの頚椎の病気ときくと非常に残念でならない。

アンチな人々からは、ちまちま仲間うちでサバゲーをしているだけの漫画だとか、少年兵が異世界との戦闘の全面にたつなんてあまりに馬鹿馬鹿しいなんて叩かれるし、主人公に魅力がないと言われる漫画ではあるが、しっかりと読み込めばそんなことはないとわかるし、今ちょうど物語も主人公たちの住む世界から、異世界へと旅立つルートが見えてきた矢先だっただけに本当に残念でならない。

 

普通の漫画であれば、主人公の三雲修少年は、異世界からの来訪者と一緒に、あっさりと異世界に旅立つだろうし、主人公としてメキメキとレベルアップして無双キャラになっていくのだろうけれど、この漫画では4年かけても彼はまだまだ弱い。一対一だと他のメンバーにほぼ勝てないくらい弱い。致命的に基礎能力が足りないというハンデを背負っている。

 

物語的にも、この漫画だと主人公サイドは異世界から攻め込まれることはしばしばあるが、こちらから主人公が異世界に行くということはこれだけの年月が経ってもまだ一度もない。他のメンバーは行くが、主人公は弱くてまだいかせてもらえない。行くための資格を取るための修行期間? を描くだけでも4年近くかけている。
こんな漫画は滅多にない。

 

そして、それだけの時間をかけても、まだまだ明かされていなかった初期設定が徐々に出てきいて物語の全貌が見えず、破綻せずにSFとして成立している。
こういう漫画は本当にちょっとない。
だからこそ、本当にこの時期の休載が痛い。

17巻のレビューだから最後に少しだけ内容に触れると、この巻では、さきほどから弱い弱いと書いている主人公・三雲修が実は大活躍する。
仲間内部でのランク戦でも新しく使い始めるスパイダーという武器(武器といってもその名の通り、糸を張り巡らせるだけといえばそれだけの武器なのだが)をうまく使い、チームを勝利に導く戦術を一つ編み出す。
そして、そうした勝利の上で、軍の司令官ならびに幕僚の面々と会議を行い、自分のやりたいことを押し通すのだ。大人たち相手に話術、交渉術と駆け引きで見事、異世界からの捕虜でもあるヒュースという戦士を自らのチームに参加させることに成功する。

もちろん、この漫画のことだから主人公が大人たち・司令官たちを手玉にとったなどという描写はなされない。修側から見れば、自分のやりたいことを通したように見えて、実は相手側からすれば相手側の一番やりたかったことは通されているという事をしっかりと書き込んでくれている。そういう硬さというか世界がきちんと動いている感じを書いてくれるのがこの漫画らしいといえばらしい。しかしながら、このヒュースという人物の加盟でいよいよ主人公チームには異世界行きのチャレンジの機会が訪れようとしている。
そういう機運のところで話は進んで行く。

 

すでにジャンプ本誌で連載したぶんのストックがあるから、あと一巻もしくは二巻はコミックが出るだろうが、そのあとはどうなるのか、、、、本当にまさにこれからという時だっただけにくどいようだが残念でならない。
葦原先生が病気をしっかりと治したうえで、1日も早く再開されることを心待ちにしたい。

 

ワールドトリガー 17 (ジャンプコミックス)

ワールドトリガー 17 (ジャンプコミックス)