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『物書同心居眠り紋蔵』佐藤雅美著 感想

先週末に『鬼平犯科帳』の最終回をテレビでやっておりましたが、なんというか時代の流れを感じさせる最終回でした。

実は私、意外にも、といってはなんですが時代劇も結構好きだったりします。また時代劇が好きですので、当然ながら時代小説、捕物帳の類も好きだったりします。

八丁堀の旦那や岡っ引きが頑張って事件の謎に迫ったり、その周辺の人間ドラマにホロリとさせられます。このあたりは、若い頃からじじむさいと言われつつずっと変わりありません。

暴れん坊将軍」や「桃太郎侍」「三匹が斬る」あたりの大メジャー作品も、「右近捕物帳」「御家人斬九郎」なんぞもよく見ておりました。

 

そんなせいで、時代ものであれば普段読まない作家さんや、あきらかな大長編でも手に取ってしまうわけですが、その中には何度も読み返してしまう作品・シリーズがいくつかございまして、本作もそんなシリーズの一つの第1作です。

 

「物書同心居眠り紋蔵」。

私、この、作品を読むまで、お奉行所のお役目の一つに例繰方なんていう、判例調査のような場所があることを知りませんでした。

奉行所の中では職掌がはっきり分かれており、ドラマなどで下手人捕縛に町中を駆け回っているいわゆる三廻り衆の同心達の他に、取り調べや調査中心の吟味方同心、そして本作主人公の藤木紋蔵のような例繰方同心などがいたとのことです。勿論、その上に与力や奉行がおられるわけですが、このあたりは世襲制で同心が出世して奉行になる、今で言えば刑事が出世して署長になったりはしなかったようです。

さて、その例繰方とはどんな役職かというと、過去に同じような事件が起きた時にどのような判決がなされたかという過去の判例を調べるというお仕事です。

なんと、日本の判例主義はこの頃からガッチリとそうだったんですね。昔このような判決があったから、今回の事件はその判例に従ってこのように裁可しよう、なんてなったのですね。

 

そして、本作主人公の藤木紋蔵はやむをえずその役職についた人物です。というのも、彼はいまでいうナルコプレシー、突然眠気に襲われてつい居眠りしてしまうという奇病の持ち主なのです。

当然、そんな病気を抱えていますから、外回りにつくわけにもいかず、捕物に参加すると危険だし、急に外で居眠りをするのでは外聞も悪いし、ということでこの仕事に回されたのでした。

 

勿論、そんな彼ですから、大きな事件に関わったり大立ち回りとは無縁なのですが、逆にだからこそ彼ならではの味のある時代劇が仕上がっております。

貧乏人の子沢山という言葉の通りに、貧乏に苦しみつつも、きちんと南町奉行所の一員として働く彼の日々はなかなかに味わい深いものがあります。

今現在もシリーズ作品がでていますので、今後とも時々読み返しながら、楽しみたいシリーズです。

 

物書同心居眠り紋蔵(一) (講談社文庫)