『虚実妖怪百物語 序』京極夏彦著
ひさびさの京極夏彦です。
往年のファンとしては、京極堂シリーズの新刊でないことが残念でなりませんが、書店で見つけてパラパラと 読み始めると、本作には、なんとなんと、京極夏彦、黒史郎、平山夢明、荒俣宏、福澤徹三らが実名で出てくるではありませんか。続々とでてくる実在の登場人物たち、その中には、執筆当時はまだご存命だったのか、水木しげる御大も出てこられます。
つまり、舞台は現在、架空の世界ではなくこの現実世界。
彼らの日常に、妖怪たちが浸食してくるのがこの物語です。
多くの登場人物にとっては、伝承や言い伝えに残る妖怪たちのその大半は創作であり、状況の説明の装置としての存在だったはずです。怪異は怪異としてあるが、妖怪というのはそのようなものである。という認識でした。
しかし、それをあざ笑うように、現実に浸食し、多くの人々の前に現れ始めた妖怪たち。肉眼で見える触れる「しょうけら」「朧車」に「一つ目小僧」そして「魔人加藤」。彼らはそれにどう立ち向かうのか。といったようなお話です。
個人的には、物語の冒頭にシリアに現れた、旧日本帝国軍風の衣装を見に纏い現れた異形の風貌の男がどう考えても『帝都物語』 の加藤保憲にしか思えず、そこも胸熱でございました。
嶋田久作演じる加藤保憲vs京極夏彦(できれば京極堂。中禅寺であればさらによし)なんて妄想を頭に思い描くとそれだけで興奮してしまいます。
物語としての評価は、大作の中の1巻目ということでまだまだ評価しづらいところですが、上記のような内容だけで取り敢えず二重丸。しかしながら、途中にでてくる登場人物たちに軽さ、駄洒落、地口の多さは読む人によってはしんどいし、登場人物が多すぎるのもカオスに感じるかもしれません。